日記

第145回定期演奏会

先日の定期演奏会をもちまして卒団いたしました、令和2年度責任者の上林由月です。
去る12月13日に、昭和女子大学人見記念講堂において慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団第145回定期演奏会を開催し、終演後2週間以上が無事に経過いたしました。この度の演奏会でお世話になった先生方、OBの皆様、関係者の皆様、そしてご来場・ご視聴いただいた皆様に御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
今年度は例年とは異なった練習環境で、9月からの約3ヶ月半の短い練習期間となりました。また、座席使用数を1/4にカットし、完全招待制かつオンライン配信での演奏会となりました。そのため、練習を含めた演奏会準備には初めて行うことが多く、手探りの部分もありました。例年以上に団員が結束し、協力しながら準備をし、また、OBの皆様からの多大なご支援をいただき、無事に定期演奏会を開催することができたと考えております。
さて、第1ステージでは、常任指揮者の佐藤正浩先生の指揮、前田勝則先生のピアノで、北村協一編曲『トスティ歌曲集』から5曲を演奏しました。記録の残っている限り当団が約60年歌い継いでいるレパートリーでしたが、現役が演奏するのは2004年以来と間隔が空いていた曲集です。初めてイタリア語を扱う団員も多く、イタリア語特有の語感を表現することに苦労しましたが、佐藤先生、ヴォイストレーナーの小貫岩夫先生の熱心なご指導もあり、徐々に感覚を掴んでいきました。演奏でイタリアの空気感を感じていただけたならば幸いです。
第2ステージでは、令和2年度学生指揮者の菊地敬の指揮で、多田武彦作曲『わがふるき日のうた』を演奏しました。この組曲は2箇所ソロパートがあり、ソロオーディションは延べ18名が立候補する激戦となりました。演奏会ではオーディションを勝ち抜いた団員がしっかりとソロを歌いあげました。

休憩を挟み第3ステージでは、菊地敬の指揮、和田太郎(学生)のピアノで、土田豊貴作曲『5つのジュエル』を組曲初演いたしました。この組曲は当初5月の東京六連にて宮本益光先生の指揮で組曲初演する予定でしたが、公演が中止となってしまったため、宮本先生・土田先生のご厚意により本演奏会での学生指揮者による組曲初演が実現しました。土田先生には当日会場にお越しいただき、終演後にはお褒めの言葉をいただきました。組曲初演団体としての責務を果たせたのではないかと思います。
第4ステージでは、佐藤正浩先生の指揮、前田勝則先生のピアノで高嶋みどり作曲『青いメッセージ』を演奏いたしました。蛙の目線から死と生をテーマとした難曲で、表現に苦闘する部分が多くありましたが、曲の持つメッセージを少しでも伝えることができたのではないかと思っております。
その後、佐藤先生・菊地によるアンコールがあり、ステージストームでは例年は卒団生が肩を組んで指揮者の交代ののち「丘の上」の2番を歌唱しますが、今年は肩は組まず1歩前に出て広がり歌唱しました。私はこの瞬間に卒団を実感し、感激のあまり歌えなくなるものと思っていましたが、案外過去3年間とおなじよう最後まで全力で歌い切ることができました。「丘の上」は卒団生による2番が終わると、再び全員で「新しい世の鐘が響くよ」という歌詞で3番が始まります。この歌詞が世代交代を象徴しているように思われ、私は3番を歌いながら後輩たちの時代が始まるのを感じていました。
今年度は例年とは違う1年でしたが、この年に責任者として団を運営することができたのは、一生の財産だと思います。また、厳しい状況の中でも定期演奏会開催にこぎつけられたことは、皆様のご協力の賜物であると感謝するとともに、この苦難を乗り越えたワグネルは、今後も逆境に負けずに活動し続けられると感じました。
私はOBとして現役を支える側に回りますが、今後とも慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団をどうぞよろしくお願いいたします。