第64代東西四大学合唱連盟理事の長友と申します。
この度は、去る6月28日にすみだトリフォニーにて開かれた第64回東西四大学合唱演奏会が盛会に終わりましたことをご報告いたします。
お越しくださいました1392名のお客様に心から感謝申し上げます。
今年の四連でワグネルは佐藤正浩先生の指揮でプーランク作曲の『アッシジの聖フランチェスコの4つの小さな祈り』、サン・サーンス作曲の『サルタレッロ』を演奏いたしました。
昨年と同じフランス語の宗教曲と世俗曲の組み合わせとはいえ、難解なフランス語と雰囲気の全く異なる2曲。
その上、就職活動や研究室、留学などで四連に出演できない団員が続出し、東京六連を終えたワグネルは音楽的にも運営的にも大きな壁に打ちのめされました。
しかし、これに挫けることなく、上級生との練習に食らいついてきてくれた13人の新入生たちと共に練習を進めてまいりました。
六連後の2ヶ月足らずの短い期間での練習はとにかく一回一回の密度を濃くし、どれほどフランスのエスプリの境地に近づくことができるかを突き詰めていきました。
その結果、本番ではフランスで研鑽を積まれた佐藤先生と今できる最高の音楽ができたと思います。
私たち140代から畑中先生を知らない世代となりましたが、佐藤ワグネルとして木下先生・畑中先生が大切にされてきた想いを受け継ぎながら、佐藤先生にしか引き出せない音楽をお届けできればと思います。
なおこのフランス語2曲は今後、福島演奏旅行、ゆうやけの歌フェスティバル、そして定期演奏会で再演いたします。
四連から更に飛躍していくワグネルにご期待ください。
そして合同ステージは山脇卓也先生の指揮のもと、多田武彦先生による委嘱初演作品、男声合唱組曲『達治と濤聲』を、そしてアンコールでは山脇先生がかつて初演を振られた多田先生の『帆船の子』を演奏いたしました。
ここで、この『達治と濤聲』が誕生するまでの話をさせていただきます。
今年の四連は「伝統」と「旋風」をテーマに運営を行ってまいりました。
先輩方が4つの団旗の下に築いてこられた「伝統」。
それはその当時の先輩方が死力を尽くしてできたものの積み重ね。
「革新」という言葉でそれを否定したくはありませんが、その言葉に満足してしまったら、その時点で発展は止まってしまうと考えています。
現状に甘んじることなく、四連の舞台で男声合唱の魅力を存分に伝えて、もっと男声合唱が流行っている世の中にしたい。
そのきっかけとなる「風」を吹かせる演奏会にしようと幹事校の早稲田を中心に準備を進めてまいりました。
それでは男声合唱の魅力を最も理解し表現できる作曲家は?と考えた際、処女作『柳河風俗詩』から半世紀以上、男声合唱作品を生み出し続けている巨匠・多田武彦の名前が真っ先に上がりました。
著名なタダタケ作品の演奏も考えましたが、四連合同の大合唱を通じて男声合唱の魅力を伝えるには、委嘱初演という形で四連合同ステージのために書かれた曲を演奏するのが最も相応しいという私たち四連理事の想いと
多田先生の中に昔からあった大合唱のための構想が結びついて生まれたのがこの『達治と濤聲』となります。
なお多田先生との交渉にあたり、ワグネルのOBの方から多大な御支援を賜りました。
この場を借りて、改めて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
またその指揮は早稲田出身で、合唱団お江戸コラリアーずの指揮者である山脇卓也先生にお願いしました。
学生時代から四連を愛していた山脇先生。
練習でも四校の特徴を把握しておられ、相互の理解が深い状態で本番のステージを迎えられたのではないかと思います。
この委嘱初演を通じて、私たちの想いをどれほど届けることができたでしょうか。
このたび、早稲田のOBの方のご尽力もあり、カワイ出版から『達治と濤聲』の楽譜が発売されました。
この曲に込められた多田先生と私たちの情熱がこうして後世に受け継がれることを光栄に思います。
是非お買い求めください。
さて、思い返せば私が幹事校の早稲田の面々と出会ったのもまだ新入生だったころの金の卵練習でした。
あれから丸3年。
四連最後のステージストームで歌ったSlavnostni Sborが私が一年生の金の卵で最初に歌った曲であったことを思い返すと不思議な縁を感じずにはいられません。
新入生の晴れの舞台、金の卵コンサートはいよいよ本日となりました。
金の卵コンサートの成功と、この演奏会から私たちのように一生の友となる出逢いがあることを願ってやみません。
長友拓磨